きのね

 台風1号が発生して、いよいよ夏が近いなぁーと実感している今日このごろです。嵐が来ると三半規管が狂うのか空気が薄くなって頭が重いような気がします。うだうだしたくなる時期に入って来ました。ですが台風は自然環境において悪い事だけでなく良い事もあるようです。沖縄では淀んで二酸化炭素がいっぱいになった海をかき混ぜ、新鮮な酸素の含まれた豊穣の海を作ります。その酸素や栄養が豊かな珊瑚礁をはぐくむのだそうです。自然界に余計なものなどないのだと思います。


 最近読んでいる本があります。以前このブログでも書いた「天璋院篤姫」の作者宮尾登美子さんの作品で「きのね」です。戦中戦後にかけて生きた歌舞伎役者の世界で女中→内縁の妻→正妻となった方の一代記でした。前作の宮尾登美子さんの作品が読みやすくて手に取りました。


 こちらもとても良かったです。歌舞伎世界のしきたりとか演目とかが全くわからない私でしたが難なく読める作品でした。今の世の中では通用しない男尊女卑や職業差別も描かれていましたが、それを当たり前のこととして生きる人がいた時代の風景が嫌味もなく描かれていました。そして、主人公はとても一生懸命に幸せや悩みを受け入れて生きていました。



 夫には実際にモデルがいたようです。わがまま、内弁慶な夫でしたが、眉目秀麗で歌舞伎に対しては全く手を抜かない大役者でした。役者の世界、特に歌舞伎はあれこれしがらみやしきたりが多い世界とは聞きますが病に侵されても一途に芝居を考え続ける夫、支える妻…現代からみたらけして理想の夫婦とは言えないかもしれませんが、一読して良かったと思いました。