貧しき人々




 今日でゴールデンウィークが終わるという方が多いようです。ラジオをつけていてもUターンラッシュの話題や空の便の混雑状態などの情報が逐一入ってきます。子供の時からゴールデンウィークやその他連休、祝祭日にどこかに行く習慣がなかった私には遠い世界の話です。今まで渋滞で困った経験はほとんどない気がします。それでも、ゴールデンウィークには近場で鯉のぼり祭りがやっていたので自転車で見に行っていました。残念ながら去年から中止となり寂しく思います。またどこかでいい風景に出会えればと思っています。




 ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」「白痴」に続いて「貧しき人々」という作品を読みました。ドストエフスキーの初期の傑作です。他の二つに比べて短く、登場人物も少なくすらすら読めました。主人公とヒロインの文通を通して進む物語になっています。ですから喋り言葉の文章です。

主人公は中年~初老のしがない男で女性は若く美しいけれど悲惨な状況の娘です。序盤手紙は子供のような愛情のやり取りで始まりますが、だんだんとお金や人間関係のいざこざが見えてきます。そしてお金を借りなくてはにっちもさっちもいかないふたりの状態が見えてきます。そしてそこに娘の親戚が娘に求婚をする話に展開していきます。その男は主人公よりも年上で愛情はなくただ甥っ子に自分の相続をさせたくないためだけに結婚するというのです。




 娘は最初どうしようもないという感じでした。悲しみの中嫁にいくという感じでした。しかし、花嫁支度にかかるとなんだかワクワク感が漂ってきます。見たこともないフリルやレースの服を主人公に手紙で頼んだり、指輪のことをを考えたり...なんだかちょっと楽しそう?な感じです。そして最後は主人公が嘆き叫ぶ手紙で物語は終わります。




 読み終えて、感じたのはロシア盤の木綿のハンカチーフだということでした。「恋人よ~♪」で始まる往年の歌謡曲です。男女の違いはありますが、貧しさから苦労していたヒロインが嫁ぎ貧しさから逃れる感じやフリルやレースにときめきを隠せない手紙の書かれ方等は、男が都会に染まり恋人を捨てるシーンを彷彿とさせました。どこの世界も結局はお金やスタイリッシュなものに支配されてしまう...そんな現実を感じさせます。




 評論は読んでないし本当のところはわからないけれど、色々な小説から私はドストエフスキーは結構冷めた現実主義者だったのかなあと思いました。キリスト教の話題を出しても恋愛の話題を出しても、それに溺れている人は必ずバカを見るように描かれている気がしました。