処方

 絵画は遠いもの、学校で習ったけどそれだけのものという声があります。私の知人もそんな一人で、特に仕事の第一線で働いていたときは美術館に行くとか、家に絵を飾るとかは考えたこともなかったと思います。

身体も心も本当に疲れて、なんにもできないときに人は何から憩いを得るのだろうか?と思っていました。私はその知人がボーッとベットにいるときに音楽を聞いたらとかラジオをつけたらとか色々気分転換ができるようなことに誘ってみました。しかし、本当に疲れきってエネルギー0のときはそれすらも目障りで耳障りで疲れるだけのもののようで反応なし。ほとほと困ってしまいました。


 そんなとき自分ができることが絵を作るだけでしかないことにイライラしてしまいそうになりました。絵を見て楽しむことができるのは、エネルギー0のときではないんだなあと思いました。エネルギーが1か2か、少し溜まったときに絵を観てみるとそれは気持ちを上げる力になるように感じました。

 

 幸いにも今その人は回復傾向にあって、色々なことが少しずつもとのように動き出そうとしているけれど、世の中にはたくさんそんな状態におかれた人々がいるんだと思います。

 薬とにているなと思いました。適切な時期に適切な処方のもとで飲まないと薬は意味がないように、本当に心が欲しているときに絵がそばにあることが大切なんだなあと思いました。