私には、絵を見る時にいつも思うことがあります。「やっぱり本物はよい」ということです。
パリに一年間留学していたとき、私はできるだけ本物を見るということを心がけました。そのなかで特に印象に残っているのがミラノで見たボッティチェリの作品群です。上の作品もその一つです。この作品画像を見て、私たちはつるっとした、筆致のない作品のように感じます。極限まで筆致を消した、美しい作品。。。それがこの画像から受ける特徴ではないでしょうか。
しかし実際にこの作品を前にした時、私は新たな気づきがありました。とても繊細な細い細い線の集積(ハッチングといいます。)で人体の色味や透明感のある肌質を表現していたからです。その線は、作者であるボッティチェリの息遣いです。なん100年もの時を超え、この作品は私に彼の生命を伝えているような気がしました。
作品ってそういうものではないかなと思います。プリントには簡便さ、利用価値の高さ等々の長所があります。しかしその作品から作品以上の何かを得ようと思ったらやはり本物に触れることが重要だと考えます。
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